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中小企業だからこそできるワーク・ライフ・バランス推進

2012年3月22日

NPO法人フローレンス 事務局長 宮崎 真理子氏

若者、女性、高齢者などの労働市場が進まず少子化の流れを変えることができなければ、2050(平成62)年の労働力人口は4,228万人と、2010年の6,590万人の3分の2弱の水準まで落ち込むことが見込まれています。※

それにともない、経済力の低下も避けられません。このような状況のなか、働き方の改善が求められています。

今回のコラムでは、NPO法人「フローレンス」でボランティアから社員まで多様な働き手のマネジメントを行っている宮崎さんに執筆してもらいました。

※ 平成23年版「子ども・子育て白書」(内閣府より)


このコラムは、中小企業の人事部のみなさんに向けて書いています。

このコラムにたどり着いてくださったみなさんの中には 、以下の記事をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

「2060年、総人口8,674万人に 減少数は1都6県消失規模に」

2012年1月30日産経新聞配信(厚生労働省:社会保障審議会人口部会が発表した日本の将来推計人口より)

 

そう、ご存知のように日本の総人口はすでに減少に入っていますが、今後もその勢いを増し、50年後には現在の約7割になると予測されています。1都6県の消失と同規模と言われると、その凄さがよりリアルに感じられるのではないでしょうか。また、以下のグラフを見れば、今後65歳以上の高齢者割合が高くなり(50年後には高齢者が全体の約40%になると予測)、働き盛り層や、子供が減っていく様子がおわかりいただけるでしょう。

 

総務省統計局「日本の統計2011」 総人口の推移

総務省統計局「日本の統計2011」 総人口の推移

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そして、こちらのグラフもご覧ください。

平成9年以降は共働き世帯が、いわゆる専業主婦世帯を上回り、その差が広がりつつあることが示されています。

 

内閣府「男女共同参画白書」平成23年版 共働き等世帯数の推移

内閣府「男女共同参画白書」平成23年版 共働き等世帯数の推移

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子供は減り、高齢者が増え、働き盛り層は共働きで男女ともに仕事に家庭に大忙し。これが、現在進行している私達をとりまく大きな変化なのです。 では、この流れは私たち人事部にどのような影響を与えるのでしょうか?また人事部として、どんなアクションを起こせばいいのでしょうか?

どんな影響を与えるのか?答えは簡単です。まず第一に、多様な働き方のマネジメントが求められるようになります。男女問わず介護や育児といった家庭の事情で、働き方の変更をせざるをえなくなりますから、これまでのように9時から18時まで、時には残業もすることを前提としたマネジメントは通用しません。短時間勤務や、週に○日だけ、はたまた成果ベースの業務委託など、好むと好まざるとに関わらず、多様な働き方の人が一緒に働く組織をマネジメントしてゆかねばならないのです。第二に、中小企業ではこれまで以上に採用が難しくなります。だって、働き手自体が少ないのです。他社よりいい条件がなければ、ますます人は集まらなくなるでしょう。

このような影響に対し、人事部の私達が起こすべきアクションは、多様な働き手たちが、ライフイベントを乗り越えながらも、長くそしてイキイキと活躍できる組織づくりです。これを組織のワーク・ライフ・バランス化と呼び、以下に、実際の中小企業の事例を紹介しながら、推進のポイントを紹介します。

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を使わず、論理で攻めよう

中小企業で、働き方を変えるための施策を提案するとき、間違っても「ワーク・ライフ・バランス推進をしましょう」と言ってはいけません。そのカタカナ語を使った途端に、自分には関係ないものとして、経営者の耳はパタンと閉じてしまうのです。

数々のワーク・ライフ・バランス賞受賞企業の株式会社エス・アイの社長・今本氏は、「能力が同じなのに働ける時間で給与が違うのはおかしい」と、全社員時給制を導入しました。導入当時を振り返り、「眼の前の問題を解決し続けるうちに、結果として職場のワーク・ライフ・バランス推進になっていた。はじめた時はワーク・ライフ・バランスなんて言葉はなかった」と語っています。

また、経営者自ら育児休業を取得するなど、新しい働き方の先端をいくNPO法人育て上げネット代表・工藤氏は、「施策を提案してくれるなら、論理的、なお且つ、個人だけでなく会社がよくなるという視点が必要。この2つがあれば経営者は喜んで話を聞くだろう」とおっしゃっています。

 

認定や助成金を活用しよう

ワーク・ライフ・バランスは、今はじめればまだメリットが大きい取組です。本腰を入れていない企業が多いので、少しでも成果をだせば、認定や助成金が取りやすく、無料で広報をしてもらえます。それによって、さらに取材がたくさん来て会社の認知度が上がり、思いもよらない優秀な人が応募してきてくれるなど、お得なこと満載なのです。

例えば、東京都が行う「東京ワークライフバランス認定企業」。私が所属するNPO法人フローレンスは、長時間労働削減に取組み、2009年に認定していただきました。その結果、取材や講演依頼が来て、多くのメディアに取り上げていただきました。3年経った現在でも求人を出せば、「この時の記事を見た」といって応募してくる方がいるほど、広報効果があるのです。

 

子育て真っ最中女性とインターン生を積極的に受け入れよう

新規人材が必要になったら、子育て真っ最中女性を積極的に採用することです。彼女たちは、従来通りの長時間労働当たり前マネジメントの組織では嫌われ、なかなか採用されません。そこを逆手にとるのです。小さくても責任ある仕事と、両立可能な働き方を提供するだけで、採用環境の厳しい今であれば、彼女たちは組織に対するコミットメントを高め、意欲的に働いてくれます。さらに、子どもの発熱など突発的な事情で休むリスクを抱えた彼女たちをマネジメントすることで、計画的に業務を進める風土と、突発的な事態で誰かが欠けても回る仕組みをもつ組織を創り上げることができるのです。

子育て女性同様に、学生インターンも積極的に受け入れましょう。大企業がよくやる一週間体験コースのようなものとは違った、密度の濃いインターン活動の場を学生に提供し成長体験を積んでもらいます。巣立った彼らは、5年後、10年後に力をつけ、人脈や仕事を持って帰ってきてくれるのです。

この春、私の部署に一人の女性が入社しました。彼女は数年前に学生インターンとして弊社で事業立ち上げに携わった後、新卒でコンサルティング会社に就職。その後出産を経て、「仕事で思う存分能力を発揮しながら、家庭との両立をはかりたい」と戻ってきてくれました。出戻り社員大歓迎!組織文化をよく理解した経験者をコストゼロで、採用することができたのです。

 

さてどうでしょう?ここまで読んで、自分の職場を変えていこう!という気持ちになっていただけたでしょうか。日本企業の約9割を中小企業が占めています。私達が働き方を変えれば、大きな変化が起こせるはずです。

 

「これまで、会社では家のことは話さないのが常識だった。これからは、ライフも会社にある程度オープンにして協業していくことが求められているのではないか」。これは、先日開催した中小企業働き方革命シンポジウム(NPO法人フローレンス、港区共催)の一参加者が発表してくれた意見です。従業員のこうした意識の変化を感じ取りながら、新しい時代の新しい働き方を一歩ずつ共に切り開いていこうではないですか。

<プロフィール>
宮崎 真理子 氏
(NPO法人フローレンス 事務局長)

スタッフ数120名のNPOで、多様な働き手が生産性高くイキイキ活躍できる組織づくりを推進するとともにその成果を広め、主に中小企業のワーク・ライフ・バランス化を支援している。2012年働きがいのある会社ランキング第8位(Great Place to Work Institute発表) 。筑波大学大学院教育研究科カウンセリングコース修了。社会保険労務士・JCDA(Japan Career Development Association)認定CDA (厚生労働省指定キャリア・コンサルタント能力評価試験合格)。

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