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離れて暮らす親の介護と仕事の両立~笑顔で暮らすために~

2013年12月13日

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長 太田 差惠子 氏

介護は、育児と違い、急に直面し、しかも期間が長期に及ぶ可能性があります。また、その担い手も責任ある立場の中高年層であることが多いのが特徴です。

今回は、介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんによる、仕事と介護の両立をテーマとした全3回の連載コラムをお届けします。

その1:仕事と介護の両立

介護の取材を始めて20年程になります。主に、親子が別居しているケースに注視してきました。取材を通して、「離れて暮らす親子は、今後ますます増えるに違いない。なのに別居介護の情報は皆無に等しい」と危機感が募りました。そこで、1996年に「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年法人化しました。

 

多くの別居子を取材していくなか、仕事と介護の両立に悩む声をたくさん聞きました。親と別居しているケースでは、親が支援や介護を要するようになると「このまま別居を続けてもいいのだろうか」という悩みにぶち当たります。多くは、自分たちが親の家やその近辺に転居するか、親に自分たちの住まいに越してきてもらうことを検討します。

自分が親元への転居をするには、仕事をどうするかが大きな課題となります。大手企業に勤務するケースでは、「親元にある支店に異動希望を出そうと思う」という声を聞くことがありますが、そうはうまくいかないことの方が多いでしょう。

「親元には支店はない」

「そういう事情での転勤は無理」

「不可能ではないが、それは自身のキャリアをあきらめることになる」等の声…。

 

自身の仕事のみならず、結婚している人であれば、配偶者の仕事にも影響します。子供がいれば、転校などの課題が出てくることも…。

とはいえ、逆に親にこちらに来てもらおうと考えても、簡単ではありません。多くの親は住み慣れた家で暮らし続けたいと考えています。環境の変化は心身の状態に悪影響を及ぼすことも…。

たとえ諸事情が許し、来てもらうことができたとしても、子世代は仕事で出掛けるため、日中は親だけに…。知らない土地での「日中独居」は厳しいものがあります。結果、呼び寄せた親だけにしておけず、退職を選択した事例に出会ったこともあります。

 

私が「仕事と介護の両立」の重要性を考えるとき、必ず思い出す女性がいます。40代のUさんです。彼女はある専門職として個人開業して頑張っていました。子育て期も仕事を継続。が、ようやく子供の手が離れた頃に、故郷で暮らすひとり暮らしの父親が認知症を発症したのです。Uさんは悩みましたが、父親をひとりにさせておくには危険があります。自営業ということで会社勤務の人よりは身軽と考えたようです(実際はそんなことはないのですが)。Uさんは単身実家に戻って、父親の介護に専念することにしました。

 

しかし、勢いで決断したものの、Uさんはすぐに後悔します。

「父のために、大好きだった仕事を辞めてしまった」と泣く姿を私は何度も見ました。

「父のために実家に戻ったのに、父は、感謝していない。私に暴言を吐く。毎日、毎日、介護だけの生活で、辛い」と言って、また泣くのです。

父親は病気のせいで乱暴な物言いになったり、自分本位になったりすることもあるようです。仕方のないことです。

 

が、もし父親が元気だったとして、娘が「父のために仕事を辞めてしまった」と泣く姿を見たら、どんな思いがするでしょう。私であれば、耐えられないだろうと思うのです。

こういうケースでは、悪循環を生みがちです。

仕事を辞めた後悔

 ↓

結果、要介護者に優しく接することができない

 ↓

結果、要介護者・介護者共に生活が穏やかに送れない

 

Uさんの場合は、結婚しており配偶者の収入で家計を賄えていましたが、仕事を辞めることで経済的に生活が成り立たなくなることもあります。

なかには、「当面は親の年金でなんとかなる」と考えるケースもあります。しかし、介護期間は長期に渡るケースもあれば、早期に終了するケースもあります。親が亡くなれば、当然、親の年金はストップします。自身の年金が出るまで、どのように生計を立てるかは大きな問題になります。

 

私は多くの方を取材してきて思うのです。「辞めたくない」「辞めたら経済的に困窮する」というケースでは、介護離職は避けるべきだと。辞めたところで、介護がスムーズにおこなえるとも思えません。

簡単ではないかもしれませんが、仕事を続けつつ、介護をする方法を考えることが大切です。次回に続きます。

(その2に続く)

イラスト

<プロフィール>
太田 差惠子(介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長)
京都市生まれ。20年にわたる取材活動より得た豊富な事例を基に、「遠距離介護」「ワーク・ライフ・バランス」「介護とお金」等の新たな視点で新聞・雑誌・テレビなどで情報発信。行政、組合、企業での講演実績も多数。1996年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「パオッコ~離れて暮らす親の ケアを考える会~」を立ち上げ、2005年5月法人化した。
パオッコ http://paokko.org/
【著書】
「70歳すぎた親をささえる72の方法」(かんき出版)、「老後介護とお金」(アスキー新書)、「遠距離介護」(岩波書店)

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