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意見交換会 第2回概要(平成22年3月8日開催)

様々な立場からワーク・ライフ・バランスを推進

【矢島(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/コーディネーター)】  本日は、労務をご担当されている方や、ダイバーシティ・女性活用・両立支援などに特化してご担当されている人事の方、その両方合わせてされている方など、色々なお立場の方にお集まりいただいています。せっかくですので、IT業界におけるワーク・ライフ・バランスという話に入る前に、まず各ご担当のお立場からワーク・ライフ・バランスに取り組む上での課題などについてご意見を伺えたらと思います。


【A社】  私の場合は労務厚生グループに所属しており、時間があれば仕事と生活の両立はできるという前提のもと、根幹のところは時間だろうということで、基本的に勤怠管理の観点から残業削減や休暇取得促進をメインにワーク・ライフ・バランスの取組を進めています。

また、隣にあるダイバーシティグループが両立支援、女性活躍推進から始まって、外国人や障害者の方々の多様性をどう活用していくかということに取り組んでいるので、そことコラボしながら推進しています。


【B社】  私は勤怠を始めとした労務管理を担当しております。また、育児・介護休業制度等の企画も担当しておりました。長時間勤務は社員の健康面だけではなく、ひいては会社の活力を失う可能性があるという観点から、効率的に働き、勤務時間を短くするということを目的として、ワーク・ライフ・バランスの取組が始まりました。

育児休業は2004年に法定を上回る制度を作りましたが、もともと女性比率が低いということもあり、あまり女性にフォーカスせず、残業時間の削減という観点から全社的に取り組んでいます。


【矢島】  C社さんは、労務部門の方とCSR推進部門の方がいらっしゃいますが、労務のお立場、CSRのお立場、それぞれどういう形で取り組まれているのですか。


【C社】  弊社は人事(労務部門)が主に制度関係の企画・運用を行い、CSR推進部門がセミナーや集会を開いて風土醸成を行いながら社員のいろいろな声を吸い上げ、人事(労務部門)のほうでそれを参考に制度改定を検討するという役割分担をしています。

一般の社員からすると、人事部には固いイメージがありますが、CSR推進部は環境問題、社会貢献、コンプライアンス、事業継続、ワーク・ライフ・バランスと幅広く一緒に活動しながら取り組む部門ですので、人事部より気安く本音の意見が言えるのかもしれません。それをCSR推進部門から人事(労務部門)のほうに伝えたり、改善策を考えて人事制度改善の材料にしてもらいます。


【矢島】  勤怠管理などと両立支援で区別するのではなく、制度設計はすべて人事(労務部門)で行い、CSR推進部門は社員のニーズを吸収するという役割ですか。


【C社】  制度設計などの権限を持っているのは人事部で(笑)、CSR推進部門は社員の意識を変えていくという役割をしています。


【D社】  弊社は人事部の中にダイバーシティ推進室があり、社員のニーズや職場の現状を踏まえた施策の実施のため、社員の声を集めたり社内のイベントを開催したり、PDCAサイクルを回しています。関係部門としては、制度担当や労務担当、各現場のダイバーシティ窓口等と連携しながら取り組んでいます。


【E社】  弊社には環境向上委員会というのがあり、例えば、フロアのここが段になっていて危ないだとか、休暇制度などがこういうルールだと使いにくいだとか、社員に対して、働きにくいことありませんかといったアンケート調査をしたりしています。そのほかに採用委員会というのがあり、人の評価やスキルの管理を技術部門のマネージャーと一緒にやっています。それ以外に、労務などは総務が担当しています。


【矢島】  総務の方が労務を担当されていて、それ以外に、新たな課題やニーズを吸い上げたり、制度を考えたりする組織が委員会方式で置かれ、このメンバーはほかの仕事と兼務されているということですね。

F社さんはいかがでしょうか。人事や労務に関する社内の組織としてはどういう形をとられているのですか。


【F社】  採用をメインに担当する人事部門と、勤怠管理などの労務的なことを担当する管理部門に分かれていますが、人数が少ないので基本的には全員で全件対応していくというような形になっています。

当社は社員の声を聞く場が多くあり、そこで新規のビジネスの話から、働く環境についてのことまで出てくるのですが、ワーク・ライフ・バランスの制度に関することなどについては人事・管理部門で対応するという感じになっています。


【矢島】  E社さんに似た形で、幅広いテーマを意見集約してくる中で、各ご担当の方に検討を振り分けるという形ですね。

G社さんは、企画・特命業務担当という形になっていらっしゃいますけど……。


【G社】  基本的にはワーク・ライフ・バランスに関することや、C社さんのCSR推進部門が行っているような社内での従業員へのヒアリングなど、上からトップダウンでおりてくる業務などを専任で行っています。

当社はワーク・ライフ・バランスに関して、特定の担当やセクションなど特に取り決めはありません。ワーク・ライフ・バランスへの取組も、ある社員が育児による時短勤務をしている中で、社内の制度では子育てと仕事のバランスがうまくとれなくなるおそれがあるということで、問題意識を持ってもらってスタートしたものでして、それをサポートするのが企画・特命業務担当の役割になっています。


【矢島】  人事や制度設計の担当者ではなく、社員が自発的に声を上げて提案された意見に対応するという形で取組が始まったのですね。

会社の規模やその会社のワーク・ライフ・バランスに対する問題意識などによって、部室を新たに設けたり、全社横断的なチームなどの臨時的組織で取り組んだりと、対応する体制はさまざまですね。


IT業界における残業削減と恒常的長時間労働への対応

【矢島】  この業界での一つの大きな問題として、残業削減とか恒常的長時間労働への対応ということがあると思いますが、こんな方向からアプローチしているというお知恵はありますか。


【B社】  深夜と休日の原則勤務禁止という取組を行いましたが、そうはいっても『システムトラブルが起きたらやむを得ない』と言われると、あえてだめだと言い切るのも難しく、また、実効性を検証するところまでいかず、徹底しきれなかったという反省があります。

これを踏まえて、今後どうするかを考えていかなければと思っています。


【矢島】  その取組をされていて、例えば全社的にはなかなか改善しなかったけれども、部署によっては効果が出たということはありますか。


【B社】  部署によっては厳密に運用されてうまくいったという声は聞きますけれども、うまくいくかはマネージメント層次第です。意識の高いマネージメント層と、残念ながら意識が低いマネージメント層がいる。


【E社】  弊社では残業削減策はとらなかったんですが、この不況はすごく大きかったと思います。不況で残業が減っているかなと思ったんですが、売上が上がっていないのに残業が減っていないという社員が特出してきたので、どうして残業になっているのかをマネージメント層に聞いてみたところ、それが問題提起になって代休の促進が進んだりしました。

今までは忙しすぎてこういうことをできなかったのですが、今年は少し整理がつきました。ある意味、こういうときに考えないといけない問題ではないかと思います。


【矢島】  単に残業削減とか労働時間を短くというのではなくて、効率的に働くために業務を見直すきっかけにするということですね。


【E社】  そうですね。アンケート調査を見ても、IT業界はもともと4分の1ぐらいの人は自分の判断で残業するという業界なんです。それを何とかしていかなければいけない。

我々の仕事は、お客様に対して付加価値をどう生み出すかという観点で判断をしなければいけないということをマネージメント層には常々言っていますが、ここがおかしいというところまで今回は一緒に話し合いができました。本当にマネージメント層の考え方が変わらないと残業は減らない。

残業させてもらえるほうが仕事を覚えられていいだろうといった、昔ふうの考え方も否定できないなと思っていたんですが、そういうところを変えないとだめなんだろうなと感じています。


【F社】  当社は1ヶ月の残業時間=45時間以内が一つの区切りになっていますが、システムがカットオーバー(注)しないのにこれ以上作業しませんとは言えませんので、45時間を超えるときもあります。そこで、事前に想定できているときは事前申請をする、超えた場合は事後申請をするというルールを取り入れました。申請・報告をルール化してからは、社員が意識をするようになりました。

また、残業が発生するということは、プロジェクト上や本人の仕事のやり方などに何か見積りと違うものがあるということなので、マネージャーとメンバーとの面談を行っています。プロジェクト上の問題がある場合は営業が交渉しに行ったり、本人の仕事の組み立てに問題があるというときにはアドバイスをしたり、残業時間の短縮ということだけでなく、コミュニケーションツールの一つにもなっています。

これらに取り組む中で、どうしても削減できない部分と、工夫すれば削減できる部分と二種類あり、一概に、頭ごなしに45時間を超えないようにと言っても残業を減らせるものではないということがわかりました。

(注:新たに開発された情報システムが稼動を開始すること。)


【矢島】  プロジェクト型のお仕事の場合、当初の見込みに基づいて体制を作って、予定どおりにいけば、原則、残業は発生しないはずであり、残業があった場合どこが原因で合わなかったのかということをきちんと話し合いながら見直していくということですね。

私もプロジェクトのマネージメントをしていますが、複数のプロジェクトが並行して走っていたりすると、プロジェクトごとに違うリーダーの下に人がついていたりもするので、なかなかメンバー個々の仕事ぶりを把握しづらかったりもしますよね。


【F社】  あと、最近の案件が以前に比べて内容的には高度になっているにもかかわらず、コストや納期などお客様のリクエストが非常に厳しくなってきているので、我々のような二次請け的に入る立場の者にとっては条件がどんどんシビアになってきている気がします。アウトプットに非常に高いものを求められるようになってきているので、時間をかけなければいけない部分があることも否めないですね。


【D社】  あってはならないことですが、人事部が残業を減らしましょうと言っても、残業を隠して申告しないといった風潮があるのではないかと考えました。弊社を含めたIT業界では働いている間は大体パソコンを使っていることから、パソコンの起動から終了までのログを自動的に取って勤務時間を把握するソフトを昨年度から全社員に導入しています。

ただ、残業削減のための取組といいながら、火を噴いたプロジェクトの前でそんなことを言っても意味がないので、いかに火を噴かないようにするかを考えなければならない。例えば生産性を高める手法を専門で検討する組織を設けて共通的に流用できるコンポーネントを作るなど、短期的に見ればコストも時間もかかるけれども、長期的な展望を持って取り組んでいます。

もう一つ、意識面に関して、人事部から2週間以上の長期連続休暇の取得を推奨しています。社員だれでも取得できますが、『上司が休まないと休みづらい』という社員の声を受けて、管理職には数年に1度必ず取得することをルール化しています。管理職が取得することによって部下が休みやすくなるとともに、管理職がいない間、担当内で何とか仕事を回さなければならないので権限委譲が進むんですね。

そうはいいながらも、プロジェクトの真っ最中に取るのは難しいので、プロジェクトが終わったら「プロジェクト終了後等休暇」という名称で順番に取っていきましょうと働きかけていて、徐々にではありますが取得者が増えてきているところです。


【矢島】  残業を正確に把握した上で、生産効率を上げるために組織として効率化できることをきちんと検討していこうという取組をされているのと、プロジェクト型の仕事の場合、期間中は休みが取れないので、プロジェクトとプロジェクトのはざまにまとまって休んでいただくということですね。


【G社】  昨年の11月から試験的に始めたんですけれども、有給休暇の取得を促進するという観点から、各人の誕生月にお誕生日休暇みたいな形で、ぜひこの月に休みを取ってくださいと働きかけ、さらにイントラネットで毎月該当する社員を情報提供することで休みを取りやすくしてもらおうという施策をやっています。

実際取得している人間は、その中でも10%ぐらいですけれども、そういう取組がもう少し定着してくれば、有給休暇が取りやすくなるのではないかと思っています。


【C社】  メンタルヘルスの観点から、長時間労働のリスクは非常に高いなと認識しています。長時間労働抑制のために、人事部門としては、例えばノー残業デーを水曜日と金曜日に行っています。私どもの会社は、よく言えば自由な社風なので浸透するのに時間がかかるのですが、ビルの入退館のログを取り、ノー残業デーに何%退社しているという実績を部署ごとに全部報告するようにしたところ、組織長が自分の部署の実績を結構気にするようになり、効果は出つつあります。


一部の人に業務負荷が偏ることへの対応策

【矢島】  次に、どうしてもプロジェクトによって状況が厳しくなってしまうものもあるでしょうし、優秀な人に仕事が偏るという側面もあると思いますが、そういったものに対応するために、人による繁閑差をならす取組を行っていらっしゃることはありますか。


【C社】  どうしても特定のプロジェクトに負荷がかかって残業が増え、かつ、そのプロジェクトの中でも特定のキーマンに負荷が集中してしまうところがあるので、人事部の中に過残業のレスキュー隊というのを設けて個別にチェックしています。

単純に残業時間が多い社員に対してはもちろんのこと、問題と思われるプロジェクトにはヒアリングをかけて状況を聞いたり、個々にチェックし対策を検討するアプローチも並行してやっています。


【A社】  人事と労働組合でタイアップして、ある基準を超えて非常に残業が多い部署については、そこの事業部長を呼び出してヒアリングを行い、注意を促すということをやっています。そうすると、次はなるべく減らそうというふうにしてくれますね。

ただ、まじめな社員ほど残業が多くなりやすくて、上司は一生懸命帰りましょうとフォローしているのに、本人が仕事を好きなのか、働きすぎてしまうというところがあると思います。そこで、ウェブ社内報にワーク・ライフ・バランスはなぜやらなければいけないのかということを掲載したり、非常に優秀な上プライベートも充実していて家事もやってというスーパー社員を2名ほどモデルにして、どんなことをやっているかという知恵をまとめたハンドブックをつくって社員に配布したりして、働きすぎることはかっこいいことではないということを啓発しています。


会社側から話し合いの場を提供

【矢島】  今おっしゃっていただいたように、仕事もできて、プライベートも充実している方がモデルとしていらっしゃるといいですよね。一方で、「仕事大好き人間」みたいな、本人はやりたがっているけれど、この人倒れるんじゃないかと周りが心配するような働き方をしている社員の方も少なくないのではないかと思います。こうした方の対策をされているところはありますか。


【D社】  バリバリ働いて、ある日バッタリ倒れてしまうことがプロジェクトに、ひいては会社に対して一番迷惑をかけるということを、本人もそうですが上司に対しても啓発しています。

その一環として、職場の一番キーマンである部長層全員を対象にした職場を変えるための意識変革研修を行いました。外部講師や人事部からの話を聞いた上で、営業・開発・運用・管理部門など別々の部署の部長を4~5人のグループにして、ダイバーシティの必要性や働き方の見直しのためにどうすればいいかなどについてディスカッションしてもらい、共有しました。そして研修の最後に職場のリーダーである部長として、働き方の見直しのための宣言文を色紙に書いてもらい、イントラネット上で公開して全社員が見られるようにしています。

更にその宣言内容を職場で実現してもらうために、研修に参加した部長自身が今度は自らがファシリテーターとなって部下と一緒に職場でセッションを実施してもらうようにしています。この職場セッションについては実施状況を人事部としてモニタリングし、役員会等で報告することで強制力を持たせるようにしています。

この職場セッションに参加した社員の声として『業務以外の話をする機会が無かった部長とプライベートを含めた働き方の話ができてよかった』等も寄せられており、すぐに効果がでるものではありませんが、職場内コミュニケーションを活性化するきっかけとして継続していきたいと思っています。


【矢島】  忙しい中、話し合う機会というのが案外なくなっているかもしれませんね。ほかの面からのアプローチはありますか。


【C社】  毎月1回男女問わず「子育て座談会」をお昼休みに行っています。その中で、男性から女性の中ではなかなか発言しづらいという声が上がってきたので、隔月で「パパだけ座談会」も別立てで行っています。多くの男性社員は会社の中で子育てについて話す機会が少ないようなので、特に初めての子供を持つ男性社員などにはニーズがあると感じています。


【D社】  弊社で開催しているパパ向けセミナーは、年1回開催し今年で3回目となりました。初回は業務時間外のノー残業デーの夜やったのですが、『パパ向けなのに何で家に帰らなきゃいけない夜にやるんだ』とご指摘いただいて、昨年から平日のビジネスタイムの時間帯に変更して実施しています。業務時間内ですので外部の有識者のお話を聞いた後に、昼食を食べながらパパ社員同士の意見交換という2部構成で開催しており、毎回高い満足度を得ています。


【矢島】  私もいくつかの企業のパパセミナーに参加させていただきましたが、最初は、男性の働き方の問題だけでなく、子育てという家庭の問題について職場で話し合うということに何となく違和感がありました。

ただ、今までは、ワーク・ライフ・バランスとメンタルの問題を考えるときには、職場の人間関係が原因になることばかりが気になっていたのですが、メンタルヘルスの視点からワーク・ライフ・バランスについて研究している先生から『メンタルの問題は職場が原因のこともあるけれども、家庭のことが原因で、問題が職場で出ることもある』という話を聞いて、パパセミナーの意義について、見直すことができました。特に男性は、家庭の問題とか悩みを職場以外で解消する機会がない人が多いので効果的なのかなと。職場はストレスが発生する場でもありますが、同時に職場の人間関係によってストレスが緩和される可能性も持っているんですよね。


今後増えるであろう介護問題について

【矢島】  これからますます増えていくと思われる介護との両立についてはどんな取組をしていますか。


【C社】  これから介護は重要になるという意識はありますが、今は具体的な取組というものはありません。しかし、ワークスタイルを選ぶのは特定の人じゃなくて、社員全員が必要に応じて選べるんだという意識を植えつけていくことが、介護が急に必要になったときに休暇取得などができる環境作りにつながるのかなと思っています。


【D社】  「男性の育児」というのは男性に対してワーク・ライフ・バランスや働き方の見直しに気付いてもらうトリガーの一つになるとは思いますが、もう子供が独立してしまったようなある年齢層以上の男性にとっては、『育児は自分には関係ない』となってしまってワーク・ライフ・バランスの話は届きにくい。そのときに、介護であれば、誰にいつ起こるかわからないという問題なので幅広い人に対してワーク・ライフ・バランスを啓発できるのではないかと思っています。


【B社】  弊社では2004年に、介護休業を最大で1年3カ月取得できるように制度を変更しましたが、まだ一人も取得した実績はありません。法の定める介護認定の基準が厳しいので、人事に相談する前に、基準に合致していないと考え、取得をあきらめてしまっているケースもあるのかもしれません。


【A社】  弊社も介護休職とか短時間勤務制度は昔から整っていたんですけれども、まだあまり取組が進んでいませんでした。そこで、2年前にメンタルヘルスの外部相談窓口を設置した際に、せっかくなのでメンタルヘルスだけではなく、育児や介護なども相談できるようにしたところ、今コンスタントに相談が来ている状況です。やはりそういう環境を整えておいて良かったと感じています。


【矢島】  相談というのも一つキーワードかなと思うのですよね。介護は期間が長くなったりするので、育児休業と違って休業期間を設定しづらいものがあります。

また、介護休業の3カ月というのは、介護をするための3カ月ではなくて、その後介護と仕事を両立していく体制を作るための3カ月であるということをなかなかご存じない方が多くて、いざ介護だというときに、バタバタと介護におわれて休業期間が終わってしまい、仕事を続けられないという事態が結構起こっています。

なので、その3カ月の間に効率よく介護保険制度や施設の利用を準備する、あるいは身内の中でどういう役割分担をするかなどの体制づくりをしてくださいということをメッセージとして発したり、必要な介護関連の情報を提供するということなどが、導入当初の支援として重要です。そういう意味で、今おっしゃったような相談機能というのは非常に重要だと思います。

それと、介護休業などで長い期間休んでしまうのはなかなか難しいので、できれば在宅勤務や短時間勤務など、仕事を続けていける働き方の選択肢があるといいのかなと思うんですけれど、いかがでしょうか。


【D社】  弊社も介護休業の取得実績はたくさんあるわけではないので、それだけを見るとニーズがないという判断もできなくはありません。しかし、もしかしたら制度上使いづらいという問題や、使う側にもっと情報提供してあげなければいけないなど、何かしらの問題があるのではと思っています。

ただ、弊社では在宅勤務(テレワーク)の制度があり、利用者から、介護をしているけれども、朝病院に連れていってからテレワークによる勤務ができるようになったおかげで辞めずに済んだという声がありました。働き方の多様性を高めるということは、解決策のひとつなのかなと思っています。


【矢島】  介護のための在宅勤務制度ではなくても、在宅勤務があることで、結果として当事者の社員は助かっているとか、辞めずに済んだということですね。


在宅勤務の実践例

【矢島】  在宅勤務というお話がありましたが、何となく、IT関連企業さんですとITを活用して在宅勤務がしやすいのではというイメージがあると思いますが、いかがでしょう。


【A社】  在宅勤務については、育児と介護と障害の事由に限定して、導入しています。セキュリティも確保してやっているという状況なのですが、そこから広がらないのが課題です。

また、主任クラスについては、裁量労働適用者ということで週1回在宅勤務が認められていますが、論文を書くので週1回在宅勤務をしたいという申請がたまに上がってくる程度で、ほとんどない状況です。

セキュリティについては、PCであればワイヤーをきちんと巻いたり、ハードウェアを丸ごと暗号化するソフトが入っていたり、何重にもセキュリティはかけている状況です。

ちょっと観点は違うんですが、レンタルオフィスのサービスを利用して、裁量労働適用者と管理職についてはそこで作業してもいいことにしています。そこはある程度セキュリティも担保されていますし、メリットとしては、例えばお客様のところに行った後、本社に戻らずレンタルオフィスで仕事をして、そのまま帰れるといったこともあり、残業も削減できます。


【E社】  以前、産休明けで会社に行くのが難しいという社員が在宅勤務をやっていました。最初、時間で管理しようとしましたが、子供を抱きに行ったりするから時間じゃつけられないといった問題もあったので、成功報酬で行いました。

やはり介護があったり、子供を育てていたり、小学校に入るまでは子供との時間も大切にしたいなどの理由で週3日勤務する社員もいます。フレックスなので、本当は週何回来てもいいんですけど、そうすると周りも合わせにくいので、事前に予定を決めて仕事をしています。


【矢島】  在宅勤務やテレワークの場合、仕事の評価をどうするのかということも一つ課題だと思いますが、そのあたりについてご検討されていますでしょうか。


【C社】  まずは実施する人の役割をきっちり上司と当事者相互に確認すること。かつ、基本的には、定型業務だろうと定常業務だろうと成果指標を設けられるという前提で、成果指標作成及びそのレビュー実施に関するマニュアルを作りました。その上で、制度開始当初は作成した成果指標及びレビューした調査報告を全て人事部に提出してもらいチェックをしていました。


【矢島】  自宅で何時から何時まできっちりパソコンの前にいなければならないということでなく、成果を見ればいいと。


【C社】  上司には開始と終了の時間はメールなどで報告を受け把握しなさいとは言っていますが、在宅勤務ということは、ある意味日常生活と密接になってしまうものなので、中抜けがあってもいいだろうという考えでいます。


【矢島】  ほかに、テレワーク、在宅勤務の評価や仕事の進捗管理などについて工夫されていることは何かありますか。


【D社】  弊社では、前日までに直属上長との間で明日のテレワークで行う業務内容と成果レベルを具体的なところまで調整するようにしています。開始と終了時間は普通の勤務と一緒で、始業時間にこれから始める旨と今日やる内容をメールで上司や同僚に送り、終業時間に今日やった作業内容をメールで報告します。

ただ、通勤時間分早く始めて早く終わりたいというニーズもあったので、働き方の柔軟性を確保するために上司の承認があれば認めるようにしています。テレワークを利用した結果、時間を有効に使え、PTAの役員をできるようになったという例もあります。


【矢島】  上司と前日にやりとりするということで、週に1~2回在宅勤務をするというようなことを想定して仕組みを作られている。


【D社】  そうですね。そもそも、SEという業種は仕事としてミーティングをメインでやらなければいけない部分も多く、毎日在宅勤務はあり得ないだろうと思っていました。1年半程のトライアルの結果、例えば育児なり介護なりの事情がある方でも、週に1日、2日だけでもまとまって家事や作業ができる日があるだけで全然違うという意見が多数あったので、基本的には月8回の利用を限度とし、制度化しました。


【矢島】  かなり頻繁に在宅勤務をする場合と、月1回とか週1回程度在宅勤務をする場合では、仕事の管理の仕方や目標の与え方は違ってきますよね。


IT関連企業といえども在宅勤務は難しい?

【矢島】  また、在宅勤務については、近年特に、情報管理やセキュリティの問題への対応が厳しくなっていると思いますが。


【F社】  人事とか営業事務だとある程度現実性はあると思いますが、コンサルタント職は一切情報を持ち出せないという環境で仕事をしており、リモートでつなぐことも制限されていることが多い状況なので、そこがクリアされないと現実的ではないといいますか、ハードルが非常に高いと感じています。

セキュリティに関しては契約に従ってということになってしまうので。


【G社】  請負の仕事で、会社にいなくても自分の家からでも回線で作業ができるものならば在宅勤務も可能だと思いますが、客先に常駐して作業をするしかない場合は、在宅勤務をするためには職種を変えるか仕事を変えるしかないかもしれません。

弊社は請負よりも、お客様のところに常駐で仕事をするケースが多いので、客先との契約条件に左右されてしまうところがすごく大きいですね。そういう面ではテレワークが進みづらい状況をどう打開していくかが課題です。


【F社】  弊社の中に、どうしても介護をしなくてはならなくなった際に、出張も多く、勤務時間の波も大きく、自分でコントロールできない要素が非常に多いコンサルタント職から、内勤のポジションに替わった社員がいます。

ただ、中小企業にとってはバックオフィスのポジションがそれほど多い訳ではないので、非常に対応が難しい問題だと思います。


【D社】  弊社の在宅勤務利用者は、内勤スタッフだけではなく、営業もいればSEもいます。SEはお客様との契約上、在宅でできる仕事は限られますが、一年中必ずそのお客様の仕事しかしていないというわけではなく、週に一度会社に戻って報告をする必要などがあったりするので、そういう部分でテレワークを活用しています。


客先常駐型勤務の社員におけるワーク・ライフ・バランスは?

【矢島】  客先にほとんど行っているとか、あるいは外にほとんど出ているという方のワーク・ライフ・バランスについて何か工夫されていることありますでしょうか。


【F社】  弊社はフルフレックスで、コアタイムもなく、月の所定時間を満たせば良いという形になっていますが、プロジェクト中は常駐先のお客様の就業時間に合わせる必要があるため、自由度が少ないといった課題はあります。


【G社】  長時間労働してメンタルを崩したりしているメンバーもいますので、そういうところは営業を含めて、会社としてお客様と交渉しながら労働時間の削減を進めるといったアプローチはしています。


【B社】  最低週1回は部会等で会社に戻るといったことを、お客様へお願いをするといった取組は行っています。

また、今はお客様のオフィスに常駐するケースは、会社として極力少なくするようにしています。

客先であると、自社オフィスとは異なり、契約に無いことを依頼されるケース等があります。お客様からの依頼ですから、断りづらい面もあることから、極力自社でできる業務は自社で行うということにしています。

また、勤務時間を正しく勤怠システムに登録するという啓蒙活動の一環として、社内LANにアクセスした時間と、勤怠のシステムに登録してある時間の差異のチェックをしていますが、客先常駐だとチェックできないこともあり、極力自社で業務を行うようにしたいと思っています。上司が毎日見ているわけでもないですし、客先常駐の人はストレスが溜まりやすいという印象もあります。


【矢島】  お客様にも理解を求めるとともに、なるべく常駐せずに仕事ができる環境をつくっていくということですね。


【A社】  客先常駐型勤務は長時間労働になりやすい傾向はあると思います。

弊社は出向を含めると社員の大体5分の1が社外勤務者であり、ワーク・ライフ・バランスというとちょっと難しいんですが、年1回社外勤務者懇親会という大きなパーティをやっています。そこで常務が冗談で、前に上司に会ったのはいつかという質問をしたところ、1年前の懇親会だという社員が結構いて(笑)、個人的にはショックでした。そんなこともあるので、帰るところがあるんだという認識を持ってもらうため、年1回でささやかですけれども、こういったことをやるのも大事なのかなと思います。

また、年度ごとにスケジュールを組んで、山の中の奥のほうとか遠くに常駐している社員を人事と労働組合が訪問して、食事をとりながら最近困っていることなどを聞いたりしています。

海外へも2年に1回行き、海外の場合、一日目は職場の上司の方と本人と一緒に食事をして、家族も帯同しているケースも多いので、翌日は家族の方と本人と食事をし家族の方の愚痴を聴きに行くというようなことをやっています。


【矢島】  メンタル的にも、社外にいるだけにサポートが必要というところはあるでしょうね。

また、ワーク・ライフ・バランスは社会的にもだいぶ知られてきたことから、お客様の理解が前よりはよくなったとか、あるいは、今、こういう経済環境なのでよけい厳しいといったことはありますか。


【E社】  弊社も客先に常駐している社員が多いのですが、ワーク・ライフ・バランスを盾に客先の部長に相談に行くと、相手も『そうなんだよね』という感じで話を聞いてくださったりすることもあります。


【矢島】  クライアントのほうも最近、ワーク・ライフ・バランスに取り組み始めていたりすると相談しやすいという面もあるかもしれないですね。


【E社】  あとはなるべく常駐請負みたいな形の契約にしないようにしています。そういう契約だと労働集約的な仕事なのに時間が問題ではないみたいに言われたり、歯どめがきかない傾向があるので、そういったところは契約を見直そう、リミッターをつけようと考えています。

また、グループをまとめているリーダーは、プロジェクトが終わったときにメンバーを休ませるために、1週間ほど休みの許可を出して、休んで海外に行って息抜きをするといったことなどしています。だから、会社というより、上長がどう考えているかというところが大きいと思います。


【矢島】  自分の会社の中だけではなく、社外の理解、社会全体の理解がないと厳しいという部分はどうしてもありますよね。

そういう意味で、社会に対しての発信ということについてはなにか取り組まれていますか。


【C社】  上司は社内外に積極的にCSRメッセージを発信しています。毎週1回、イントラにワーク・ライフ・バランスや残業に関することから、事業継続や環境、地域貢献、日本の経済のあり方など社会レベルの問題についてまでも、わかりやすいメッセージにして社員の意識啓発を促しています。その中でも、特に社会全体に呼びかけたいテーマに関しては、社外に向けても、こういう日本にしたい、一緒にこういう社会にしていきましょうという思いでメッセージを掲載しております。

その中には、インターネットによる子供の被害について、IT業界の負の産物として認識し、このように注意していきましょうという警告メッセージも出しています。


ワーク・ライフ・バランスはコストがかからない!?

【矢島】  事前に、社員のワーク・ライフ・バランス向上に貢献できるコストのかからない施策を知りたいというご意見をいただきましたが、この取組はあまりお金がかからなくて効率がいいというアイデアや、何かお勧めのヒントなどはありますでしょうか。

そもそもワーク・ライフ・バランスの取組をするのにそんなにコストをかけられないよという意見がある一方で、実際に取り組んでいらっしゃる企業さんからは、そんなにコストはかからないということもお聞きします。皆さんの感覚としてはどうでしょう。ワーク・ライフ・バランスの取組というのはコストをかけているという感じはあるんでしょうか。


【B社】  残業が少なくなれば人件費は減るので、ワーク・ライフ・バランス推進にかかるコストという点はあまり考えたことはありませんでした。


【E社】  皆さんもやっていらっしゃると思うんですが、うちで取り組んでいるのは、いろいろなパターンがあるんですけど、プロジェクトは火がつくと休めないので、火がつかないように、計画段階から予算差異を見て指導していくというプロジェクトマネージメントを行っています。それはあまりコストがかからなくて、コストがよくなるのかなと。

それ以外には、エンジニアの方って聞かれないことはしゃべらない、奥ゆかしいみたいなところがあるので、そこを一つ工夫して、毎月、結婚した人や子供ができた人などの情報をニュースみたいな形でメールして、終わりのほうにワーク・ライフ・バランスに関することも掲載し、社員みんなに周知させて休暇などを取りやすくするという企画を考えています。それもお金がかからない(笑)。


【矢島】  社員の関心を引き出した上で、そこにちょっと情報を負荷するというのはいいアイデアかもしれないですね。ただワーク・ライフ・バランスの情報が載っていますよと言っても見ないかもしれないですし。

社内LANやメールを使って発信するというのがあまりコストをかけない一つの方法なのかなと思いますけど、ほかに情報発信の仕方で工夫されていることはありますか。


【D社】  そもそもやりたくてできるものではないかもしれませんが、取材が来たら基本的に断らないようにしています。お金をかけずに宣伝していただける機会を逃さないように、広報部とタッグを組んでいろいろやっています。

取組やお知らせなどを社内向けホームページに出しても見ない社員もいる。特にお客様先に常駐している社員はイントラネットから遮断されていることが多いですよね。ニュースや新聞で見て、初めてうちの会社はこんなことをやっているのかと気付く社員もいるので、できるだけそういう機会をいただけたときには前向きに協力させていただくようにしています。


【矢島】  対外的にアピールをすることは、社員に対してもアピール効果は高いということですね。

ありがとうございました。


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