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ワーク・ライフ・バランス実践研究会 第1回意見交換詳細

ワーク・ライフ・バランスを取り組み始めたきっかけと取組の内容

【矢島(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/コーディネーター)】

はじめに、各社さんがワーク・ライフ・バランスに取り組み始めたきっかけとその内容についてお話を聞かせて下さい。

 

【(株)赤ちゃんとママ社】

子育て関係の出版をしており、企業や労働組合に向けた働き方のマネジメントに関する雑誌も最近発刊しました。

世の中にそういったことを訴えるのだったら、自分のところの会社もやっていかなければと、平成15年頃にライフ&サポートという部内横断のプロジェクトを作りました。今年から「ワーク・ライフ・バランスプロジェクト」と名称変更して、会社からの押し付けでなく、どうしたら働きやすくなるかを話し合ってもらっています。社員に嬉々として働いてもらうためには、会社、地域、家庭の分野でセルフマネジメントしていくのがよいという考えのもとで取り組んでいます。

 

【(株)エアコンサービス】

当社は建設業で男性が多く、以前は女性のほとんどが結婚を機に退社していました。私が社長に就任してから、10人ほどの女性社員へ、「結婚しても働き続けたら」と話しました。当時はワーク・ライフ・バランスのことは知らなかったのですが、2009年頃、東京中小企業家同友会女性部で「ワーク・ライフ・バランス委員会」を設け、勉強会等をしているうちに、社内の女性2人が結婚し、仕事を続けて出産もしました。たまたま2人とも中国の方で、中国では親御さんが子供の面倒をみることが珍しくないということで、お国にお子さんを置いてずっと働いていました。

また別の女性社員は、お母様の介護のため「パートとして働きたい」と言ってきました。パートでは先々不安定になりますので、その時同友会で勉強していた短時間正社員の制度を就業規則に取り入れてみることにしました。厚生労働省の短時間正社員制度の支援事業(キャリアアップ助成金)を活用し、その女性社員には、お母様が退院するのに合わせて短時間正社員で勤務していただくことにしました。

中国にお子さんを預けている女性社員も、それなら子供を引き取って日本で育てたいので短時間正社員として一生懸命働きたいと申し出がありました。

 

【(株)キャリア・マム】

当社はインターネットを活用して企業のパソコン業務のアウトソーシングを受託している会社です。社員は、在宅型と出勤型が大体半々です。

私たちは、ワーク・ライフ・バランスという言葉がある前から、生活をしながら仕事をすることを当たり前のことと思っていましたが、2012年に都の「ワーク・ライフ・バランス認定企業(多様な勤務形態導入部門)」で表彰されたことをきっかけに、これを他の事業所でも使えるようにしようと、ワーク・ライフ・バランスの“見える化”を始めました。

まず、「くるみん」(子育てサポート企業としての認定マーク:厚生労働省)の申請を機に、ワーク・ライフ・バランスについて社員にアンケートを取りますと、残業をしてはいけないと言われているけど、その理由が分からない、フレックスタイムを一度も取ったことがない、といった声が挙がってきて、ワーク・ライフ・バランスの理念や制度を理解していない、申請の手続きを知らない社員が多いことがわかりました。

次に次世代育成の推進をしていくなかで、1時間単位の有給休暇の創設、フレックスタイムの枠の拡大、残業時間の縮小に取り組みました。

一方で、就業時間を1時間延ばし8時間にするとともに、6時間と7時間の短時間正社員を採りました。延ばした就業時間の中で、研修や勉強会に参加して、正社員として将来のキャリアプランを考えて欲しいという思いがありました。

育児休暇中も、育児休業者のための能力アップ支援をしている(株)wiwiwのサービスを使用して勉強ができます。休んでいる間も会社の掲示板、インフォメーションが全部見られるようにしています。育児休業や社会保険からの色々な助成は、復帰することが前提ということで、権利と義務の話もしています。

 

【(株)クリタエイムデリカ】

当社は365日24時間操業の食品の製造工場です。ワーク・ライフ・バランスに取り組んだきっかけは、大卒正社員で入った女性が、結婚を機に辞めてしまうケースが発生したことです。育成に時間をかけた意味がないと思い、ずっといてくれる環境を作ろうというところから始まりました。初めに、企業内保育園をつくろうと、2011年に取り組み始めて、その後も色々なことに取り組んでいます。

 

【(株)ソリットナカノ】

当社は家庭電化製品の卸販売をしています。以前は女性が多い職場で賑やかでしたが、結婚の時期にみんな辞めていました。休んではいけないのではないかという空気が漂っていたらしいのです。

5、6年前、ある女性社員が、「やっと子供ができたので、産みたいが、仕事は辞めたくない。何人産んでも戻ってきたい。」と言ってきました。私は、このケースを活かしたく思い、社内で育児休業の制度を広めようということになりました。すると、実は妻が出産するので自分も立ち会いをしたいという男性社員の話も出て、こちらにも対応することにしました。

 

【(株)ヒューマンシステム】

当社はちょうどバブルが崩壊してソフト会社が軒並み倒産していくようなときに、働くところがないという5人が集まって始めた会社です。そのなかの1人が女性でした。彼女が出産をして、しばらくはカンガルーのように子連れで出社したりしていましたが、だんだん子供が大きくなり、サーバーの電源を落としてしまったりということがあって、休みを取ることになり、その後復職しました。

会社が大きくなってきた頃、社員の提案で、東京都のワークライフバランス認定企業に申請したところ、フレックス勤務を皆が活用している点が評価され、2010年に認定されました。

 

【(株)ヘキサード】

当社はソフトウェア会社なので、コンピュータがありインターネットがつながっていれば、物理的にどこにいても仕事ができるという環境にあります。そういうなかで、非常に柔軟な勤務体制をとっています。休暇等の制度をつくる一方で、私が社員に語ってきたのは、文化をつくることでした。例えば子育てで出産と授乳だけは女性しかできないですが、それ以外は100%男女関係ないですね。だけどなぜか社会的な慣例として女性がやらなければいけないようになっている。このことを男性が考えてみるべきだといったことを会社の中に醸成させました。

 

【(株)吉村】

当社は製造業で、在宅勤務は業種的に考えにくい会社です。2005年に私が社長になったとき、既に育児休業制度はありましたが、誰も使っていない状態で、女性社員は子供を産むと辞めていくという状況でした。

そこで、品川区の中小企業ワーク・ライフ・バランス支援事業のモデル企業に申請しました。コンサルタントから助言を受けながら取り組む中で、ロールモデルをつくり、その人に子育て奮戦記を社内報に書いてもらったりしました。現在は12人の女性社員が育児のために短時間勤務で働き続けています。

会社・職場における変化

【矢島】

次に、取組によって会社・職場にどのような変化が見られたかについてお話を聞かせて下さい。

 

【(株)赤ちゃんとママ社】

自分たちが働きやすいように声を挙げてと言えば、社員の方から課題を言ってきて、その声を会社が拾えるようになりました。自らが考えることで主体性を持つことにもつながりました。

 

【(株)エアコンサービス】

短時間正社員制度の導入は、社員のやる気も引き出したようです。会社が繁忙期のときは、なかなか時間どおりに帰れないこともありますが、介護との両立をされている女性も、朝ゆっくりお母様の面倒をみることができると喜んで制度を活用しています。

 

【(株)キャリア・マム】

都のワークライフバランス認定企業の表彰を頂いたことで、都心の大企業で20代のとき馬車馬のように働いていた人が、これでは子供も作れないということで、地元の当社のような小さな会社を見つけて来てくれたということがありました。ワーク・ライフ・バランスの推進により、私たちはよい人材を獲得することができました。

 

【(株)クリタエイムデリカ】

以前は、女性管理職というと、すごく仕事ができて特別な人、家庭環境のコントロールもうまくいっている人たちでした。今は、そんなに器用じゃない人もたくさんいるし、そういう人たちに継続して働いてもらうための行動として、ワーク・ライフ・バランスの取組は効果があったと思っています。

入社して間もない女性社員が結婚・出産し、1年の育児休暇の後に、1年の短時間正社員を取ったときは、社内に結構不満が出ました。その後、50代の女性社員が介護の問題に直面したときは、一番働きやすい時間帯に何時間でもいい、とにかく仕事を継続することが大事と伝え、8ヶ月間、短時間正社員の形を取りました。このケースの後、社内の不満は止みました。育児の次に介護の例が出てきたのと、彼女が復帰できたという実績が良かったのだろうと思います。以降、出産後の短時間正社員の例がたくさん出てきましたが、女性たちから不満は一切出ていません。

 

【(株)ソリットナカノ】

制度の対象外の社員には、不満を持つ人もいたと思いますが、一方で「会社でそういうことをやってくれるんだ!」という感触もあり、やや強引に制度を整えました。制度を利用した男性社員も喜んでくれました。

最初に育児休業を取った女性は、復帰後、2人目ができ、その後また復帰したのですが、最初の休業中に、会社との連絡がなくてとても不安だったというので、彼女の申し出もあり、休業中、時々会社の様子を見に来てもらいました。

彼女は復帰しましたが、2人子供がいるというのはすごく大変です。子供の体調に仕事が左右され、 来ては休んでの状態に不安を抱いた彼女が「やっぱりいてはいけないのでしょうか」と言うので、私は「いや、そんなことはない」と、本当に泣きたくなる思いで伝えました。そのときに、こういったことに左右されない会社にしたいとあらためて思いました。

 

【(株)ヒューマンシステム】

ワーク・ライフ・バランスに取り組む上では、同時にいい品質と効率よく働くことを目指すことが大切だと思っています。品質と効率を上げる取組として、6年程前から、「ヒューマンPDCA」というものをやっています。計画して相談する。実行して報告し、確認をした状態を連絡するというように、皆で成果を共有することを徹底しました。その結果、多かった残業がかなり減りました。当社はお客様の要求で働くので、時間管理が大変なのですが、品質が上がると夜中の電話も激減しました。ワーク・ライフ・バランスの取組をして品質と効率の向上が図れた成果かなと思います。

また、マネージャーになると仕事が大変なので昇任試験は受けないと言っていた社員が、出産後復帰した際に、「産まれて来たこの子のために私は頑張ろうと思った」ということで、試験を受けてくれました。これこそが、人として成長し、仕事にもプラスになる例なんだと嬉しく思いました。

一方で、社員アンケートでは、このような制度に不公平感を持っている人もいないわけではないことが分かったので、評価制度の変革にも取り組みました。プラス評価の項目をすべて社員が共有できるようにし、こういうことをやると評価が上がるというのを社員皆で共有し、さらに、評価制度自体を評価できるように今計画中です。

ワーク・ライフ・バランスというのは、ある意味、昔日本で言われていた家族経営のいい形だと思います。昔の人たちはそれをよしなに計らってやってきて、中小企業で女性は働きやすかったと思うのです。今後も、日本企業のいいところである家族経営とか、会社の中と外で社員同士が密な関係を保ってやっていければと思います。

 

【(株)ヘキサード】

当初1人目、2人目の出産例が出たときには、しょうがないと仕方なく働く男性社員と、申し訳ないと思いつつ、休みを取りながら仕事をしている女性社員がいました。これが表面化すると、人と人とのつながりのザラザラしたものが表出してしまうので、その時は、全て社長の私が悪いということにし、社長が言うなら仕方ないと気分的な安定を図りました。そうしているうちに社員が少しずつ入れ替わり、最近入ってきた社員は、そもそもうちの会社はそういう会社なんだというのがある程度定着しているので、出産・育児のため休みに入るというのが普通になりました。

 

【(株)吉村】

利用した品川区の事業では、ES調査(従業員満足度調査)を一緒にやってくれました。調査では、独身女性や男性から、子供を産むってそんなに偉いのかという声や、ワーク・ライフ・バランスに対して、「給料を上げろ」「人を倍に増やしてくれればできる」といったものもありました。

私は、「オレンジが1つあって、それをみんなで分けるためにはどうしたらいいか」という寓話をして、1つのオレンジを奪い合うのではなく、オレンジの種を蒔いて、オレンジの木を育て、みんなで収穫するような風に会社の中をしたいという話を社員にしました。

そして、社員へ投げかけて、自主的なプロジェクトを立ち上げさせました。「オレンジプロジェクト」といいます。そのなかで、つわり休暇やMO制度ができました。MO制度というのは、“戻っておいで”の略です。MO制度を使って戻ってきた人は3人程います。つわり休暇を使っている社員も結構多いです。ES調査はその後もずっと続けていて、自分にとっての通信簿になっています。

また、不公平感をなくすためには、残業時間を減らすことがポイントだと思っており、毎年、“壁新聞”で有給休暇の取得や残業縮減をPRしています。しかし、残業するのは決まった社員で、しない社員は全然しない状況なので、そういう社員の仕事のシェアに取り組んでいるところです。

今後の課題

【矢島】

続いて、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいるなかで、課題と感じている部分についてお話しください。

 

【(株)赤ちゃんとママ社】

事務部隊など、代替として人材派遣を充てようとしても、仕事を理解してもらうのに時間がかかってしまうというところが問題になってきていると思います。

 

【(株)キャリア・マム】

課題の1つは、在宅社員が自分の働きたい時間に働きたいということで、深夜22時を超える時間に、あるいは早朝に働きたいと言う際に、深夜割り増し給という労働法の規定が壁になるということ。

もう1つは、在宅型の社員と出勤型の社員との連帯感の醸成が必要ということです。ワーク・ライフ・バランスのメリットをより享受できているのは在宅型社員で、出勤型社員は、在宅型社員の尻拭いをしているといった不公平感を社員が抱かないように、「いつかはお互い様」という雰囲気にしていきたいと思っています。

また在宅制度は比較的子育て世代に向いていますが、介護のときには使いづらいというのも課題です。

 

【矢島】

キャリア・マムさんのように、もともとワーク・ライフ・バランスの理念ありきで作られた会社でも、時間が経つうちに硬直化が生じてしまうのかもしれませんね。社員の主体性や個々のニーズに従って制度をうまく活用して両立・活躍することが本質だと思うのですが、そうあり続けるために取組を見直し続ける必要があるということですね。」

 

【(株)クリタエイムデリカ】

介護は、従業員の住所地によって支援の内容がだいぶ違っているため、会社がその情報を把握できず、介護を理由とした短時間勤務を検討するのに支障が出ています。

また、今の若い人は社会性が不足していると感じていまして、それが、今後、育児・介護休業を取っていくなかで問題になってくるのではないかと思います。

大変ショックを受けたケースとして、介護のために会社を辞めると申し出た若手社員を止められなかったというのがありました。会社としては、有給休暇や介護休業をフルに使っていいと慰留したのですが、仕事を続けることに、家族から反対があったようです。家族の理解度も今後のテーマだと思います。

 

【(株)ソリットナカノ】

社員の中には、自分も休みたいが、育児・介護で大変な人を優先させてという気持ちも見えるので、制度を支える人たちにとってもより働きやすい会社にするにはどうしたらいいかというのが今の課題です。

 

【矢島】

今日お集まりの経営のトップの方々が、直接自分の思いを社員に伝えられるのも、規模があまり大きくない組織のメリットですね。一方で他の方、皆の顔が見えてくるからこそ、公平感を常に意識しながら取り組まれていることやその難しさもよく分かりました。

 

【(株)ヒューマンシステム】

介護について、介護休業の使い勝手がどうなのかという課題のほか、実家が遠いといったどうしようもない問題があると思っています。

 

【(株)吉村】

介護の問題がまだ出ておらず、独身女性で子供も今後産まないといった人たちの不公平感をどうすればいいのかということです。特に、多くの女性社員が当然の権利として育児休業を取り始め、そうした状況がどんどん増えているなか、周囲の社員との仕事量の調整をどうするか、まだ試行錯誤中です。

また、「私はこの会社でワーク・ライフ・バランスを実現したいんです」と応募してくる人がいますが、仕事をする前から、社員としての権利を主張する人が集まってくる現状が、「くるみん」を取得することを躊躇する理由の1つになっています。

そして、時間もかかり、コストパフォーマンスが悪いけれど、どうしてもこの時期は目一杯取り組まないと一人前になれない仕事があります。この部分を、ワーク・ライフ・バランス世代にどうやって伝えていけばいいのかというのも課題です。

 

【矢島】

皆さんのお話を伺っていると、会社がよかれと思ってやったことでも、従業員の声を聞くと、全員が納得しているわけではなくて、そのため、社員からの主体的なかかわりや様々な社員の声を汲み上げる仕組を常に作り続けることが非常に重要だなと感じます。

両立支援等の制度利用者と今は制度の対象になっていない人とのマネジメントについて

【矢島】

幾つか課題が挙がりました。そのなかで、様々な働き方を選択してワーク・ライフ・バランスを図るという環境の中で、制度を利用する人たちがその環境に甘えず、周囲に感謝をしながら自分の能力を発揮していくために、言い方を換えると、甘えたり、能力を発揮し切れていない人に対して、こういうアプローチをしたらいいんじゃないかと考えていらっしゃることがあればお聞きしたいと思います。

 

【(株)キャリア・マム】

当社はノンワーク・ノンペイを掲げています。大企業のようには、各費用の補填をすることができないので、休みに関しては柔軟に対応するが、働いていないところに関しては、社会保険でカバーしている部分以外は、会社では用意しないということを言っています。それがおそらく、ワーク・ライフ・バランスの制度に甘えずにということにつながるのだろうと思います。

 

【矢島】

それぞれの働き方に応じて、しっかり働いてもらい、働いた分は払うというメリハリをつけるということですね。

 

【(株)ヒューマンシステム】

仕事のマニュアルをきちんと作っていくというのも大切だと思います。当社では、自分の仕事は必ず誰かに引き継げるようなマニュアルを作ることにしたのと、総務・経理の1名と、人事1名にそれぞれの仕事を共有化してもらい、欠員が出たときに代われるようにしました。それぞれの部門長は両方の仕事が見えるよう、マニュアルをチェックし合うことになっています。

 

【矢島】

中小企業ですと本当に少ない人数で業務を担当していて、同じことができる人を2人つけるとか、2人育てるというのはなかなか苦しいというお話はよく聞きますが、そういう中でも、いざというときの代替要員や分かっている人をどう作っていくかということですね。

 

【(株)吉村】

各部署のコア業務をあらかじめ知ってもらい、そこが本当に大変になったときに助けてもらえるように状況を共有するしくみをこの夏やっています。

 

【矢島】

その時には苦しいことでも、そういったマネジメントのための時間を投資的に割いたり、人をつけて手当をすることが、長い目で見ると活きてくるということですね。
先程話がありましたように、人事制度の明確化も公平性を保つためのアプローチのひとつですね。

それから、制度利用者は甘えているとか、権利ばかり主張するという話もあるのですが、私が制度を利用している方にインタビュー調査をしていて感じるのは、そうせざるを得ない状況に追い込まれている面もあるのかなと思います。たとえば短時間勤務だけどフルタイムの人と同じような仕事を与えられている人が、黙っていたら誰もサポートしてくれない状況の中、管理職が、誰かがサポートする仕組みを作っていないとなると、自分ができるのはここまでだと割り切って帰るしかない。その都度周囲に謝っていると、何か自分が悪いことをしているみたいな気分になってくるので、もう謝るのはやめようと思いました、と。そういう人もいるわけですね。

またサポートしたいという周りのひとたちの気持ちが職場にあっても、仕事の負担感が強くなってしまうと問題になってきます。仕事の成果は分け合えばよいですが、残業等はそのまま押し付け合うのではなく、まず減らして解消していかなければならないと思います。

仕事と介護の両立について

【矢島】

介護との両立に関する課題も幾つか出てきました。介護では、遠距離の問題や地域での情報量の問題、子育てとは違った様々な仕組みが必要になる状況が生じています。また、仕事と介護の両立の調査をしていると、実際に介護との両立をしている人がどんな生活をしているのかを企業が把握していないという現状があります。介護休業を3ヶ月取った人がどんな生活をしているのか。休業を1年に延ばしている会社がありますが、3ヶ月では足りなくて1年だったら復帰できる人というのはどういう人なのか、本当にそういうニーズがあるのか、制度を作っている会社の側も実は分かっていないのです。というのは、特に働きながら介護をしている人が、実際にどんな風に介護を担っているのかがなかなか分かっていないためです。介護との両立では、皆さんどのような工夫があり得ると考えていらっしゃいますか。

 

【(株)キャリア・マム】

当社で、介護で辞めた社員5人は、在宅で働いている業務契約スタッフでした。介護と保育は似ている部分もあり、昔は、保育園に入れるなんて、介護施設に入れるなんてと周囲から言われていました。辞めた5人は、親に介護が必要になったとき、自宅が働く場になっていると両立が難しかったと言っていました。公共の施設が使える情報をもっていても、娘として嫁として踏み切れなかったのです。

当社では、介護のアウトソーシングサービスを使うことは決して悪いことではないんだということをお話してあげたいと思っています。

 

【矢島】

今日伺った皆さんの会社のお話では、介護休業や短時間勤務、あるいは在宅勤務という選択肢はあるということでした。しかし、大きな問題は、「両立ができるんだ」ということが、社会的に十分認知されていないということなのかもしれません。その点では、会社だけの取組だけでは限界があるかもしれませんね。

 

【(株)ヒューマンシステム】

介護が問題になる時期は、その人のキャリアアップの時期とも重なります。ベテランの域に達している社員が、若い人と同じ仕事をしていることに対する負い目や、若いときのように仕事ができずに苦しんでしまうといったことが出てきます。ですから、いざというときには先輩後輩間で助け合えるように、人を育て合う密な人間関係の構築に取り組んでいるところです。

 

【矢島】

そうですね。介護は主に中高年の方が制度を利用したり休んだりする対象になるので、自分がそういう立場になることに遠慮があるかもしれないですよね。

 

【(株)クリタエイムデリカ】

育児に関しては色々なセミナーがありますが、介護についてはまだそれが十分にありません。また、施設に預けることに抵抗を感じる風潮があります。これから人口が減っていくなかで、家族に対して色々な啓発セミナーが必要になってきていると思います。

 

【矢島】

そうですね。介護では子育て以上に家族の関わり方が様々ですから、働きながら介護することをもう少し世間一般で考えていくことが非常に重要ですね。

実際に介護で離職した人を調べると、離職したせいで余計に精神的、肉体的、経済的に負担が増えたと答える方が非常に多いです。社会全体で介護との両立を考えていくのがこれからのテーマではないかと思います。

皆さんの会社で、仕事と子育ての両立という分野では、様々なアプローチでそれぞれに工夫をされ、社員の方が色々な形で仕事を続けられて、その先に管理職を目指したいという方もいるように、やりがいのある仕事を見つけていけるという段階にきているのだと思います。一方で、制度利用者とそうでない人との不公平感や介護との両立等、新たな課題も出てきています。そのようななかで、今日、皆さんから出して頂いた意見は、他の企業さんにとっても非常に大きなヒントになると思いますし、できたら数年後に、その後どう変わりましたかというお話を伺えたら、また新しい発見があると思います。

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